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「2015年のものづくり」その1

コラム

「ものづくり」という言葉が世の中で頻繁に語られる時代になりました。

世界中にモノは溢れ、何を購入するかの判断が難しい状況です。

モノの背景にある物語のようなものとして「ものづくり」が機能している気がします。

2015年にホラオーディオを立ち上げるにあたって、「ものづくり」について思いを巡らしました。

このテキストは、スピーカーMONOが生まれた「2015年のものづくり」についての個人的な考察です。

 

その1「ものづくりをはじめる」

 

私が「ものづくり」を志したのは、23歳のときでした。大学で美学・藝術学を学んだ後、事務職についておりました。1998年のことです。

とても穏やかな(今では考えられないくらいのんびりした)その仕事は、若かった自分にとっては、かえって将来が見通せてしまう恐怖感を煽り、新しい世界へ飛び出したいという衝動をかき立てました。音楽や藝術を鑑賞することに人生のほとんどの時間とお金を費やしていたその頃の自分にとって、「何かをつくる」ということに対する憧れは、破裂寸前の風船のようにとても大きく膨らんでいました。

「頭だけでなく、手を動かして何かをつくりたい」という私の体内に発芽した種は、事務机に向かって仕事をしている間も絶えず成長し、何か行動に移すことでしか体内から外に芽が出ることはないように思えました。

 

最初に選んだ行動は、「家具作りを学ぶ」ということでした。以前から興味があった建築・インテリアに密接に関連する木工の技術から始めることにしたのです。職業訓練校の木工科へ1年通い、基礎技術をみっちりと学びました。それは、鉋・鑿の刃の手入れからはじまり、図面を手で書く方法、木工機械の操作方法、図面を読みとり家具を作るといった、木工職への就職を前提とした、即戦力をつけるための教育でした。「ものづくり」の世界に初めて触れた私は、結果として楽しさよりも厳しさを強く感じることになりました。日本以外の国の「ものづくり」を知りたいと思い、家具製作とデザインを学ぶため、ロンドンに留学しました。

 

イギリスで最初に気付いたことは、土地が変われば作り方が変わるということでした。日本で学んだ技術はあくまで現代の日本で確立したものであって、同じ物を作る場合でも、イギリスにおいては全く違った方法を取るということを体験しました。それは、良い悪いではなく、アプローチの違いということです。興味深かったのは、行程が異なると結果が異なるということです。写真で見たらほとんど一緒かもしれませんが、実物を見たら全く違ったオーラを纏っている。ものづくりの奥深さを垣間見た瞬間でした。

 

イギリスの学校でさらに体験したことは、「手作業のすごさ」でした。今まで機械が無いと出来ないと思っていたことが、意外と簡単な設備や手作業で可能になることに驚きました。それは歴史に裏打ちされている技術の本質を学ぶということでした。私は当時憧れていたイームズのLCWを習って、3次元曲げプライウッドの座面を木型と油圧式ハンドプレスを使って製作しました。先生は前例のないチャレンジに最初はあきれておりましたが、幾度かの失敗を乗り越え成功した時には、「Crazy Japanese boy!」と言って喜んでくれました。

 

ロンドンで初めて「自分でデザインして自分でつくる」という作業をじっくりと行いました。頭のイメージをスケッチや図面に変換して、いざ製作して完成してみたら、「あれっ。イメージとちがう。」ということに気付きました。イメージをスケッチや図面に変換するだけでは、精度が低いことに気付いて、模型を作ってそれを補いました。次は模型をつくったところで細部までは詰め切れないということが分かりました。イメージを現実の物にする際に大切なのは、そのプロセスを柔軟にしておくことだと思いました。手を動かしているときのちょっとした「気づき」が生かされることも多かったのです。

 

ロンドンで学んだ一番大きなことは、「つくることは楽しい」ということでした。それは、完成品が上手に出来るかよりもそのプロセスが大切だということです。プロセスを楽しんで作業すると、自分でも想像しなかった結果になって驚くこともありました。学校の雰囲気や先生の存在は、日本で受けてきた教育とは全く異なりました。個人の自発性に多くを委ねているところが,私にとっては気持ちよい環境に思えました。

 

こうして、私が「ものづくり」を最初に志した時に発芽した「頭だけでなく、手を動かして何かをつくりたい」という種は、ロンドンの地でようやく実を付けることができました。ロンドンから帰国してから現在にいたる15年間、様々な仕事の現場で多種多様な「ものづくり」のあり方を経験しました。その結果、「頭と手」のバランス感覚の大切さを意識することになりました。今、自分が納得できる「ものづくり」が出来た事例を思い返してみると、必ず「頭と手」がバランスよく働いていたことに気付きます。自分の「ものづくり」の根幹となる「頭と手のバランス感覚」は初期衝動ともいうべき、最初の直感的な欲求からうまれていることに今さらながら驚きを感じます。

 

text by 青柳亮

 

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